反破綻論者の言い分 ― 2011年08月09日 21時41分
まず反破綻論者の1人目は、榊原英資(えいすけ)氏である。榊原氏は官僚時代に「ミスター円」と呼ばれ、現在は青山学院大学教授を務め、テレビでもおなじみの顔だ。
竹中平蔵氏との対談の中で、まだ200兆円ほど国債を発行する余裕があるので、あと5年ほどはかなり大量の国債を発行しても大丈夫と発言している。ちなみに竹中氏は、余裕はあと3年と認識しておられるようで、筆者も竹中氏の考えに近い。榊原氏の言い分によれば、5年すると200兆円の余裕も無くなり、極めて危険な状態に陥ることになる。だから、今対策を始めるならまだ余裕があると言うべきだ。
又、榊原氏はただこのままの状態が続くと10年先は心配で、4~5年以内に財政再建策を作らなくちゃ、とも述べている。榊原氏にも心配な面があるようだが、全体的なトーンとしては、日本は絶対に破綻しないと超楽観的だ。
ただ、デフレの一因に中国などの低賃金国との競争があるとの認識は、筆者と一致している。
2人目は、増田悦佐(えつすけ)氏である。増田氏は20年以上にわたり証券会社に勤務し建設・住宅・不動産分野を担当された。増田氏の論理には賛成できる点も多いが、とにかくかなりの楽観論者のようだ。2050年の日本を、意図を持って超楽観的に予想している。
増田氏の一つ目のポイントは、超低金利の現在、国債の借り換えを行えば利払い費が減っていくので問題がないというものだ。これは確かにその通りなのだが、これからは今までのようには減らないのと、一度金利が上がり始めたら、即刻ゲームオーバーになる恐れがある。
又、本書でも取り上げている永久債の発行を提案されているが、規律を守って行い、余裕があるとき償還していければ有効だと思われる。
3人目は、三橋貴明氏である。 最近、超売れっ子の三橋さんで、2010年夏の参議院議員選挙にも自民党比例区から立候補していた。
三橋氏の言い分は、「世界最大の対外純債権国が財政破綻するなどあり得ないからだ。」とか、「国内向け債務の問題で破綻した国など、これまでに一度も聞いたことがない。」などと、破綻論者に対しては、最も手厳しい論調なのに、説得力はない。確かに一度も聞いたことは無いが、日本がならないと言う保証にはならない。日本が初めての国になるかもしれない。自ら売りにしているだけはあって、確かにデータ・グラフをふんだんに使用しているのは認めるが、ほとんどイメージでこき下ろしているのが現実だ。
三橋氏は「○○は大ウソ」という最近流行の切り口で分かりやすく、一般受けするかもしれないが、最も良くないのは、「経常収支黒字国は絶対に破綻しない」という論理である。確かに毎年経常黒字が発生し貯蓄に回っているのは事実だが、その黒字自体は20兆円弱程度で、しかも2011年度は東日本大震災の影響でぐっと減りそうだ。だいたい経常黒字自体がすべて国債の購入には回らないし、最近の新規国債発行高は年間40兆円を超えるのである。全然足らない。
それと、だれかの借金はだれかの財産と言うけれど、ちゃんと返さないといけない。返せなくなったら直ぐに信用不安に陥り、国債をだれも買わなくなり暴落する。こうして日本をミスリードしても責任をとるつもりも無いし、というかとれないし、インフレになったら国債を償還すればいいと、しっかり言い訳も既に準備している。
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