アサブロ1周年記念-「首相公選制」2012年01月20日 21時38分

1月23日(月)に政経ネット・ブログの1周年を迎えるので、1年間を振り返ってみようと思う

 

1月23日(月)に政経ネット・ブログの1周年を迎えるので、1年間を振り返ってみようと思う。

二つ目のシリーズ物は「首相公選制」である。現在はそれどころではないが、「大阪維新の会」が国政に名乗りを上げてくる頃には、重要な争点になる気がする。今から押えておきたい。

 

首相公選制-2011.9.10

民主党3人目の野田首相が誕生したが、小泉首相以降、任期が約1年の年替わり首相で、外国要人らも公式の場で冷笑すら見せている。日本の場合、官僚組織がしっかりしているから誰がやっても良いのだというのも極端すぎる意見だが、対外的にはかなりのマイナスだ。ただ、単に影が薄いばかりでなく、日本の首相には大事な話を持ちかけても意味をなさないと思われるし、政治空白の隙をついて尖閣諸島に手を出す輩とか出てくる。 

 

確かに民主党に政権を預けたのは国民だし、最初は民主党も政権運営に慣れないだろうから不手際にも少々目をつぶって我慢することが必要だが、最初の鳩山はひどすぎた。そして、菅前首相も同様だ。ほとんどの日本人が未体験の大震災があったことは、お気の毒だと思うが。3人目は、もう最後である。ここでひどいことになれば、自民党や新党に政権が移ってしまうだろう。

 

やはり国民が直接首相を選択できないと、党内のごたごたで首相が決まってしまう。そして、米大統領選とまでもいかないまでも、首相選挙に多くの労力を必要としないと、簡単に辞めることになってしまう。選挙に多くの労力が必要ならば、そう簡単に辞めてもらうわけにはいかない。必然的に慎重に選ぶことになる。

 

首相公選制は、イスラエルではうまくいかなかったと言われているが、なぜだか調べてみたい。個人的には大統領制でもと思うが、官僚組織、天皇制、憲法にも関わってくるので、簡単ではないと思う。官僚の中から自らの保身ばかりでなく、日本を変えようと思う人が出てきてほしい。坂本龍馬のごとく。

-------

首相公選制2(イスラエルの場合)-2011.9.12

イスラエルでは、首相公選制を1996年から始める前は、日本と同じく議院内閣制であった。国会(定数120名)は、一院制で全国一区の完全比例代表選のみと日本とはかなり違った選挙制度である。小党が乱立し常に連立内閣を余儀なくされ、小党の要求に振り回される事態が続いて政局が不安定だったので、その打開のため首相公選制を導入することになった。他にも多くの理由はあるだろう。

 

そして、1996年(法案成立が1992年)から2001年まで首相公選制を導入していたが、公選で選ばれた最初の首相がネタニヤフである。その後、バラク、シャロンと続いた。こうして首相公選制が開始されたが、当初の導入目的とは異なり、国民は1人で2票を持ち、首相としては国益を尊重して投票し、国会議員としては地元への利益誘導を第一に選択するようになり、より小党が群雄割拠して政権運営が停滞した。本来二大政党制を目指し、小党を無くしていくのが目的であった。国会に内閣不信任決議の権限を与えたこともあって、政局が不安定になり、首相公選制は短期間で廃止された。

 

こうしてイスラエルで実施された首相公選制は失敗したが、だからといって首相公選制に大きな欠陥があるとも言えない。なぜならば、6年間でたった3回の公選制選挙を経験しただけであるし、さらに言うと、失敗の理由には制度上の問題や政局がらみの問題もある。日本で制度を工夫すれば、巧くいくかもしれない。どちらにしても、今よりは良い。ここが大事である。訳も分からずに決まってしまう今よりはいいはずだ。

 

しかし現在、首相公選制を世界中で採用している国がないのも事実だ。

-------

首相公選制3(大統領制-2011.9.14

首相公選制を考えるならば大統領制も検討すべきだろう。

 

大統領制と言うと、アメリカ、ロシア、フランス、韓国などを思い浮かべる。ドイツやイタリアなどは形だけの大統領なのでのぞく。同じ大統領と言っても、ロシアやフランスには首相もいて仕事を分け合っているので、代表としてはアメリカの大統領であろう。

 

小泉首相時代に「首相公選制を考える懇談会」が平成14年8月7日付の報告書の中で、3案のなかの1つ、案Ⅰとして「国民が首相指名選挙を直接行う案」として報告された首相公選制案とアメリカ大統領との違いを表にまとめてみた。

 

選出方法

行政

立法

(拒否権)

議会

解散権

不信任

決議

閣僚(議員との兼務)

首相公選制案

国民直接

行政全般

×

 

×

米大統領

国民間接(選挙人)

外交、安全

保障、経済

×

×

 

この表を見ると、大統領には議会から不信任決議を受けない代わりに、議会を解散する権利も無い。アメリカは行政と立法が独立しているので、長期にわたり政権を維持できる。それに比べて首相公選制案では、現在の議院内閣制と同じく、議会解散権も不信任決議権も両方ともあるが、立法に対する拒否権が無い。こうしたことから米大統領の権力の方が強力と思われるが、そうでもないとよく言われる。すなわち、現在でも首相の権限の方が米大統領より強いと言う人もいる。

 

首相公選制を実現するにあたって問題となるのは、まずは天皇との関係であろう。アメリカにおいては天皇にあたるものがなく、大統領がそのまま元首である。日本においては、天皇が元首である。その天皇と国民から直接選挙で選ばれた首相との位置付けはどうなるのか。私は今まで通り、天皇が元首で、天皇から任名を受けた首相という関係のままで良いと思う。

 

あと、首相を始め閣僚と国会議員との兼務を禁止しているので、どんな影響がでてくるか。これはアメリカでは当たり前で、元々本来の仕事を持っている人も多く、閣僚を辞めても生活には困らないのだろう。さらにアメリカでは政権とともに官僚までが総入れ替えとなるが、日本では不可能だろう。

-------

首相公選制4(その他の問題)-2011.9.16

あと、憲法の問題であるが、第六十七条に「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。」とあるので、改正する必要がある。その際、第九条なども含めて変更する検討をしてもいいと思う。国民の多数がそのままで良いというならそのままで良いし、争点がぼけてしまうなら後でも良い。無理に変える必要は無いが、個人的にははっきりしている方が好きだ。

 

他には、ねじれの問題(首相の政党と与党が違う)とか、首相を選出し内閣を支えることで求心力を保っている政党が今日より更に弱体化し、国会議員がより地元の利益を優先するようになるとの反対意見もあるが、すでにそうなっているし、すべて何とかなる問題である。もっとも言われるのが、人気とりに走るとか、人気者がなってしまうとかの意見だが、失敗して学習すればいい。国民はけっこう賢い選択をするものである。最近の首相、何度失敗しているのか。

 

ちなみに案Ⅰ「国民が首相指名選挙を直接行う案」では、副首相も同時に国民が直接選挙で選ぶことになっているのと、首相に立候補するには国会議員何十名かの推薦を必要とするしばりがかけられている。確かに誰でも立候補できるのは、行き過ぎである。

 

首相選出選挙にかかる経費だが、アメリカの大統領選は行き過ぎている。お金を集められるのも政治家の重要な能力の一つだが、小沢一郎などの例のように別の方向に向かいかねない。ある程度の資金力で戦えるよう、経費の総枠を抑えるべきだ。

 

以上、4回に渡って検討してきたが、首相公選制はできない相談ではないと思った。何事も良いことと思ったら、問題点は1つずつ解決していけばよい。こんなに問題があるよとネガティブな思考に陥ったら何もできない。あとは、実行に移すだけである。実際、国会議員のなかにも、山本一太参議院議員らによる「日本型首相公選制を実現する会」という集まりの中で進められているようなので応援していきたい。