第5章 デフォルトしない為に_一部2011年08月24日 21時33分

日本国の処方箋

『日本国 デフォルト』の「プロローグ」、「第1章」と「第4章」が終わったところです。この「第5章-デフォルトしない為に」は有料で、パブーのサイトで販売しているのですが、今日はせっかくなので、その一部を無料で公開します。

 

プライマリーバランス

 

ここで、少しプライマリーバランスについて確認をする。よく間違えるところだからである。小泉構造改革でもよく取り上げられた。日本語では「基礎的財政収支」といって次のような定義となる。

 

 プライマリーバランス=

純貸出(+)/純借入(-)+支払利子

―受取利子

 

なんだか訳の分からない数式だが、これ以上中身にまで深入りするのはこのサイトの目的では無いので、簡単に説明すると、「その時点で必要とされる政策的経費を、その時点の税収等でどれだけ賄えているか」を示す指標である。プライマリーバランスの均衡とは、簡単に言うと税収等だけでやり繰りすると言うことだ。もっと正確に言うと、[図表6]において税収(その他収入も含む)だけで国債費を除く歳出をまかなう訳である。よって、利払い費は除かれてしまう。

ここが間違いやすいところで、利払い費分、国債残高は増えていってしまう。金利よりも成長率が高ければ、債務残高対GDP比が改善するというロジックなのだ。国家予算と家計は違うが分かりやすいので家計に置き換えると、給料だけで食べていくことだ。しかし、住宅ローンなどの返済は残ってしまうが、それ以上に給料が増えれば何とかなる。

 

しかし、プライマリーバランスが均衡する頃には、1500兆円位まで借金が増えている。だから、まだ570兆円が借金として残ってしまうが、ここまで来れば何とかなりそうだ。借金をゼロにする必要はない。低金利であれば借金をして投資を行い、金利以上に儲ければいい。

 

企業は皆、そうしている。あの無借金経営で有名な、「トヨタ銀行」とも呼ばれたトヨタ自動車㈱でさえ、最近はかなりの借金を抱えていて12兆円を超える有利子負債がある。もちろん、それに匹敵する現金も保有している。多額の現金を内部留保しているのにかかわらず借金をしている。借金をしてもお釣りがくるくらい金利が低いので、将来の為に現金には手をつけずに置いておくのである。

 

ただ、消費税率を10%に上げるだけでも遅々として進まない現在の政治状況では、20%に上げるのはいつのことになるのか。しかし消費税率を上げられないのは、国民の思いに近いはずだ。けっして政治家や官僚のせいだけではない。長い目で見れば、国民の思いが政治状況を作ってきたはずだ。

 

それと消費税を丸々借金返済に充てるなんて夢のまた夢だろう。年金などの福祉目的税としてならば増税もやむなしと言った世論からして、消費税のほとんどは借金返済に使えない。よって100年かかるか、200年かかるかという話になりそうだ。その間に破綻する可能性も十分に残る。早期に消費税率を20%に上げる為には、国民への充分な説明は欠かせない。さらに国会議員自らの定数削減や歳費のカット、公務員の人員削減や給与のダウンを示さないと無理ではないか。すなわち「隗より始めよ」ということだ。